理事長挨拶

日本化粧療法医学会 理事長挨拶

 

 化粧は医学・医療にどこまで貢献できるだろうか? 

 

 地球生態系の頂点に立つ人類は、英知を結集し、共同生活を基本とし他の生物を制御し今日の繁栄を迎えている。人類は現代人が想像するはるか以前から化粧をしていたに違いない。もちろんその化粧手段は現在とは大きく異なっているとしても!我々人間は美しいものを見ると、脳の辺縁系のある部位が活性化されることが近年fMRIで証明されている。つまり、人類は石器時代以前から美しいものを見ると幸福感を味わうことを知っていたに違いない。だから、自己を美しく見せる一つとして化粧が工夫され男女を問わず楽しんできたと思われる。エジプト文明でも髪型に特徴があることから、時代による美に関する意識の違いはあったものと想像される。 

 

 ところで、わが国では現在でもまだ、化粧は医療として一般に広まっていない。私が留学していた45年前の英国ロンドンの病院では、すでに当たり前のように入院患者さんに化粧を施し、見舞いに来る人たちと明るく面会できるよう側面から支えていた。化粧の専門家が会話を弾ませ、各個人の好みに合わせた化粧をしていた。その患者さんの明るい笑顔や楽しそうに話す様子が今も頭から離れない。それは、「きっとその患者さんの心は明るくなったに違いない。」「きっと病気に立ち向かっていく精神力を生むに違いない。」と化粧の持つ底知れぬ力を感じたからだ。化粧が人の心を活性化しているのは間違いないことだ。 

 

 近年、ようやくわが国にも高齢者が集団で生活している高齢者施設にて、化粧の知識と技術を持った人が、高齢女性に化粧を施し、彼女たちの表情や心を明るくする支援グループの姿を見かけるようになった。そして最近、素晴らしい発見があった。高齢女性の化粧だけではなく、視力を失った人の化粧として話題となっているブラインドメイクは、視力がないにもかかわらず化粧を施すことで心が明るく、また、生き方や考え方が積極的になることも明らかになってきた。このことが眼科の医療現場で行われている。こうした社会的背景の下、化粧を医学として位置づける学問として確立する必要があると考え、2018年12月5日に「日本化粧療法医学会」を立ち上げることになった。 

 

 学会の目指すところは、①化粧が皮膚その他の臓器に与える影響を科学的に明らかにする、②化粧がどこまで人の心を活性化し、高齢者の健康な生活支援に有用であるかを医学的に実証する、③人類が地球上で安心して使える環境にやさしい追跡可能な化粧品を提案する、④皮膚機能を高め若さを維持する化粧に関する研究等を遂行し、化粧の社会的価値感を高め人類の幸せに貢献する。そのため、本学会は、化粧に関わる多種専門家、研究者、企業者を対象とした学術集会を毎年開催し、基礎研究、治療法、治療現場の実際などの新知見を発表し、その成果をもとに化粧の持つ健康への効果とその安全性を広く一般に発信し、国民の健康に役立つことを目標とする。 

日本化粧療法医学会設立の趣旨に賛同いただける多くの方々と学会の場で議論できることを楽しみにしている。 

 

 化粧療法で人をどれほど幸福にできるのか? 

 また、世界のだれもが親しく笑顔で付き合える魔法の化粧療法を求めたい! 

 

 

2018年12月5日

日本化粧療法医学会

理事長 市橋正光