有識者等のメッセージ&対談

田淵昭雄先生からのメッセージ

川崎医科大学・川崎医療福祉大学名誉教授

「ブラインドメイク」
ロービジョンケアあるいはロービジョンリハビリテーションにおいて視覚障害者(以下、当事者)へのサービスあるいは更生支援は当事者の日常生活を可能にしたり、生活や行動の質を改善したり、新たな世界へ導入する。しかし、その実現には当事者の強い参加の意志とたゆまぬ努力も必要で、その状態にもって行くためのキッカケ(手段や励まし)が案外むつかしい。
私の専門とする小児眼科では、初めての検査や協力のいる検査では、例えばアンパンマンの視標で興味を持たせて注意を集中させることが最初の仕事である。そして、うまく検査ができると褒めることで自信ができ、次の検査が可能となる。弱視の治療では悪い方の目を使わせる目的でよい方の目を隠す(これを健眼遮閉とよんでいる)ことが多いが、それに用いる遮閉膜(俗称、アイパッチ)にアンパンマンとかトーマス(機関車)の絵を張り付けると成功しやすい。子どもはアンパンマンとかトーマス(機関車)に成りきっているのか、それを貼っていることの優越感なのか、本当のことは分からないが喜んで協力してくれる。
ブラインドメイクを、上記の子どもの特性と同一にすることはできないが、女性(最近は男性も)にとって、メイクやファッションは生涯切り離せないものでありながら、当事者ゆえにそれを否定している(否定していなくても出来ないとあきらめている。時には周りも無関心である)事は私には考えられない。「うまくメイクしているね。綺麗なよく合ったファッションね。」の誉め言葉は女性同士の当たり前の日常会話である。(男性の私は「歯の浮くようなことをお互いよく言うな」と思っているが)。
「メイクが出来ないから人に会うのが嫌だ。うまくコーディネートした服装を着れないので外出しない。」これほど損な生活や人生を送ることはない、というのが私の考えである。
以前から、資生堂が当事者に化粧を施す活動を当事者の集まり(例えば、網膜色素変性症の会;JRPSの会)などで紹介していたことを思い出すが、このたびは当事者を主体とした本格的な組織として発足した一般社団法人日本ケアメイク協会(理事長:大石華法)の活動を全面的に賛同している。大石華法氏が実際に伏し目勝ちであった当事者にでも可能なメイク法を指導し、その後その当事者が笑顔で人と対応し、自信ありげな姿をしているのを見た時、これもロービジョンケアあるいはリハビリテーションの一環であると確信した次第である。当事者が自信をもって、そして素敵な女性に成りきって(本来はこれが普通であるが)外に出て社会活動するキッカケになるのがこのブラインドメイクである。
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川崎医科大学・川崎医療福祉大学名誉教授
田淵昭雄先生 

安藤伸朗先生からのメッセージ

済生会新潟第二病院眼科 眼科部長

「ブラインドメイクの勧め」
視覚リハビリテーションあるいはロービジョンケアと聞いて、どんなことを思い浮かべますか?たいていの場合、視覚に関する障害を持った方が、日常の生活を行えるようにするため努力や忍耐が必要とする訓練をイメージするのではないでしょうか?
 
ブラインドメイクは、全然違うのです。自ら美しくなりたいという女性本来の欲求を満たす術なのです。参加する方々は、それこそ生き生きとしています。ご本人が美しく変身するばかりではなく周囲の人も明るくするのです。魔法と言っても過言ではありません。
 
視覚に障害があってもブラインドメイクを会得して美しくなれるというのは、単に見かけの問題ではありません。ご本人の尊厳の問題なのです。
 
ブラインドメイクは、ご本人の表情を生き生きとさせます。周囲の人間をも明るく変えます。何よりもご本人がプライドを持って人生を歩むことになる、とてもとても大事な術なのです。
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済生会新潟第二病院眼科
眼科部長 安藤伸朗先生

松久充子先生からのメッセージ

 静岡市さくら眼科 院長

静岡市さくら眼科ではロービジョンケアのひとつにブラインドメイクの指導を開始しました。
多くの視覚障害者の方々が自分でメイクすることを諦めているのが現状ですが、ブラインドメイクの技法を習得することで自分できれいにメイクすることができ、より積極的な社会参加へのきっかけになっていくことが期待できます。
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静岡市さくら眼科
院長 松久充子先生

 五味文先生からのメッセージ

住友病院眼科 眼科診療部長

「広がれ、ブラインドメイク」
ブラインドメイク~視覚障がい者の方の特別なものでしょうか?
いえいえ、メイクをする誰もが知っておくべき、ちょっとしたこつ満載のメイク法です。たとえば口紅がはみ出さないように塗るには、両手の小指を使えばよい、などといったテクニックは、車内や暗がりで口紅をつけるときに重宝します。自身の手の感触を大事にしながら進めていくメイクですので、小さいものが持ちにくい方、体を起こしにくい方などにも応用していただけると思います。
私はこのブラインドメイクを実際に見せて頂き、それが女性にもたらす力を実感しました。メイクは、日々の生活に色を添えるものです。色が少ない世界に過ごしている視覚障がい者の方はもちろん、メイクをすることに不具合を感じている人たちにも、このメイク法を知ってもらって、カラフルで華やぐ気持ちを多く持ってもらえるようになればと思います。
そのためには伝道師がたくさん必要です。寄り添い、励ますことができる人ならだれでも伝道師になれます。ブラインドメイクの輪、皆で広げていきたいものです。
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住友病院眼科
眼科診療部長 五味文先生

 植木麻理先生からのメッセージ

大阪医科大学眼科学教室 眼科医

「ブラインドメイク」
われわれ眼科医は患者様の見る力を維持することが最大の任務です。しかし、どんなに治療を行っても十分な視力を保つことができないことはあります。
そのときにわれわれ眼科医ができることはいままでにより近い生活をできるように視覚障害による身体障害手帳の申請、障害年金の申請、視覚障害者の訓練所の紹介、介護保険の申請などになります。
しかし、これは最低限のものを維持するためのものです。女性であれば「眉毛の描き方、失敗した」ということで1日憂鬱になることもないでしょうか?逆に「そのリップ、あなたに合ってるね」と言われて嬉しく思ったこともあるでしょう。
目の見にくい方も同じです。視覚障害者で頑張ってお化粧をされている方もおられますがどうしても色が濃く、過剰になります。口紅がはみ出ていることもあります。彼女たちがそのことを指摘されたら外出すること人に会うことが怖くなるのではと言うことができませんでした。たぶん彼女たちも不安に感じていたと思います。
ブラインドメイクを知って、それが間違いだったと知りました。ブラインドメイクを習得した方にお会いすると自信をもって人前に立たれていることが感じられます。ブラインドメイクが広まって視覚障害者の方が通常の社会生活を送られることを心からお祈りしています。
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大阪医科大学眼科学教室
眼科医 植木麻理先生